古典派シンフォニー

百花繚乱

 

ハノーヴァー・バンド The Hanover Band


 名前の由来は、イギリスにおけるハノーヴァー朝に由来する、古典派時代からロマン派の時代におけるロンドンの重要なコンサート会場、〈ハノーヴァー・スクエア・ルームズ〉に拠っています。

 このコンサート会場の建立・設立に関わった、J.C.バッハとC.F.アーベルはイギリスにおける公衆に向けた演奏会を本格的に始めたふたりですが、ハノーヴァー・バンドのレパートリーは、確かに彼らの音楽の近辺を出発点としています。ハノーヴァー・スクエアーは、1790年代に興行師サロモンによってウィーンから招聘されたハイドンのシンフォニーの数々が初演された会場でもあります。

 ハノーヴァー・バンドは、1980年3月にチェロ奏者のブラウン(Caroline Brown)によって創設されました。1987年には学者のデル・マー(Jonathan Del Mar)とタッグを組み、ピリオド楽器のオーケストラとして最初のベートーヴェンのシンフォニー全集を完成させました。この経験からデル・マーは、ベーレンライター社からシンフォニー新全集を刊行。その楽譜が世界のベートーヴェン演奏に革新をもたらすきっかけとなったことはご存知でしょう。

 設立初期には、ヴァイオリニストのハジェット(Monica Huggett)や、グッドマン(Roy Goodman)が指揮を務め、ハイドン、モーツァルト、また19世紀にレパートリーを広げ、ピリオド楽器によるシューベルトのシンフォニー全集をいち早く完成させています。

 彼らのレコーディングは、緻密に時間をかけて編集を細かく、というよりも、CDを聴く限り、一本マイクで一発ライブ録りというような、ライブ感満載の生き生きした音楽を信条としているように聴こえます。多少荒削りではありますが、こねくり回さない、イン・テンポでグルーヴ感のあるまっすぐな演奏がうれしい。

 ナチュラルホルンの大変な名手として知られる、ハルステッド(Anthony Halstead)は、ハイドンのシンフォニーなどの難曲をオーケストラの中で確かな技術で支え、長年にわたりこのオーケストラのクオリティを高める役割を果たしてきましたが、ソリストとしてもハノーヴァー・バンドとともにモーツァルトのコンチェルトや、難曲、C.M.v.ヴェーバーのコンチェルティーノを録音しています。驚くべきことに彼はクラヴィーア演奏にも通じていて、ヨハン・クリスティアン・バッハのクラヴィーアのためのコンチェルトの弾き振り、シンフォニー、シンフォニア・コンチェルタンテ、などこのロンドンのバッハのあらゆる器楽作品をcpoレーベルに録音しています。

 ハノーヴァー・バンドは、学術的な側面と、パフォーマー魂とのバランスがとてもよく、頭でっかちになりすぎることのない、聴衆の喜びを常に意識した演奏に魅力があると言えるでしょう。オフィシャル・ホームページに自ら書いている通り、「啓示的で、魅力的で、卓越した、明るい」といったような形容詞がぴったり当てはまります。

 創立者のブラウンが2018年3月に亡くなり、ほとんどの設立メンバーが姿を消してゆく中、かつてのような興味をそそる話題を聞くこともなくなってしまったハノーヴァー・バンドですが、バイル(Benjamin Bayl)やエスファハニ(Mahan Esfahani)ら若いリーダーを迎え活動を続けています。

【ハノーヴァー・バンドのニンバス録音全集CDの表紙】

【筆者所蔵のハルステッド=ハノーヴァー・バンドによるJ.C.バッハのディスク】

(2018.7.27)

ハノーヴァー・バンドの公式サイト

http://thehanoverband.com


【関連動画】

C.F.アーベル:シンフォニー 変ロ長調 作品17-2

ハノーヴァー・バンド、A.ハルステッド(指揮)☆