古典派シンフォニー

百花繚乱

 

フィルハーモニア・バロック・オーケストラ Philharmonia Baroque Orchestra


 世界有数のオーケストラがいくつもあるアメリカ合衆国という大国でありながら、ピリオド楽器で古典派シンフォニーに取り組むオーケストラで目を引く団体は数えるほどしかありません。イギリスからの伝統を比較的色濃く残す東海岸にある大学や博物館での研究。1980年代後半からピリオドアプローチを採用するボストンに本拠を置く由緒ある〈ヘンデル・ハイドン・ソサエティー管弦楽団〉などの例はありますが、ヨーロッパにおける雨後の筍のように各地で勢いよく古典派オーケストラが設立されている状況と比べると、アメリカ合衆国のオーケストラ界の反応は今のところ鋭いとは言えません。

 そんな中にあって、西海岸のサンフランシスコで1981年に設立された〈フィルハーモニア・バロック・オーケストラ〉は、アメリカ合衆国で最も古くから活躍するピリオド楽器オーケストラとして知られています。名実ともにこの国を代表する団体ということができるでしょう。

 設立後間もなくの1985年には、ニコラス・マギーガン(Nicholas McGegan)が音楽監督に就任。サンフランシスコのベイエリアでの定期公演、合衆国内外の演奏旅行を行っています。オーケストラには、〈フィルハーモニア・コーラス〉という合唱団が付属していて、オペラや宗教作品の上演も盛んに行われています。

 設立当初はバロック作品の上演に主眼が置かれていましたが、近年は古典派からロマン派までレパートリーを広げ、また新作オペラの委嘱上演や、マーク・モリス・ダンスグループと組んでH.パーセルのオペラ「アーサー王」や、J.Ph.ラモーのオペラ「プラテ」をモダンな演出で舞台に乗せるなど、〈古楽オーケストラ〉の枠にとらわれない新たな試みを積極的に展開しています。

 以前より〈ハルモニア・ムンディ〉や〈BMG〉に多数のレコーディングを行っていましたが、2011年に自主レーベル〈フィルハーモニア・バロック・プロダクションズ〉を設立して、ベルリオーズの「夏の夜」や、ハイドンとベートーヴェンのシンフォニー、ブラームスの「セレナーデ」などをハイテンポでリリースしています。

 〈フィルハーモニア・バロック・オーケストラ〉は、作品の書かれた時代のスタイルを、真正な楽器を用いて高いレベルで実現することを標榜。そうしたアプローチにより、なによりも情熱と喜びと生命力を音楽に与えることが大切と考えています。演奏を通じて聴く者の歴史認識を豊かにし、伝統の中に息づく作品をまた未来の世代の利益にしてゆくことを使命と考えています。

 アメリカ合衆国出身のピリオド楽器を操る演奏家、また学者が、世界各地で数多重要な働きをしているのは周知のとおり。本国においても古典派シンフォニーに取り組む団体が増え、オリジナリティー溢れる興味深い演奏会や録音が今後どんどん現れてくることを期待したいと思います。

【N.マギーガンとフィルハーモニア・バロック・アンサンブル】

(2016.4.13)


フィルハーモニア・バロック・アンサンブルの公式サイト

https://philharmonia.org


【関連動画】

J.ハイドン:シンフォニー 101番 ニ長調「時計」より第1楽章

フィルハーモニア・バロック・オーケストラ、ニコラス・マギーガン(指揮)☆