古典派シンフォニー

百花繚乱

 

18世紀オーケストラ Orchestra of the 18th Century


 リコーダーの演奏の可能性を格段に広め、この楽器のヴィルトゥオーゾとして、チェンバロのレオンハルト(Gustav Leonhardt)らとともに戦後早くから古楽の復興につとめ、オランダをその世界の拠点とするほどの影響力をもったブリュッヘン(Frans Brüggen 1934-2014)が、1981年にヴァイオリンのダール(Lucy van Dael)とピリオド楽器を操る仲間たちとつくったオーケストラが〈18世紀オーケストラ〉で、名前の通り、ブリュッヘンの専門の音楽である18世紀の音楽を主なレパートリーとして活動が始められました。年間4~5回の各々緩いテーマをもつツアーが組まれ、最後にはレコーディングが行われるというサイクルを重ねてゆき、2018年現在のツアーナンバーは148と打たれています。録音はフィリップスや、後に参加したグロッサという大レーベルが担当。それらの録音は毎回世界中の音楽ファンから待ちわびられ歓迎されました。

 レパートリーは当初のラモー、J.S.バッハ、ハイドン、モーツァルトという18世紀のレパートリーから次第に広がり、2度にわたるベートーヴェンのシンフォニー全集、またシューベルトとメンデルスゾーンのシンフォニーも全集がつくられました。

〈18世紀オーケストラ〉の選曲は埋もれた作品の蘇演よりも、名作に真実の光を当て直すことに主眼を置くスタンスがとられています。ハイドンやモーツァルトも舞台に上げられるのは有名な後期のシンフォニーたちが主。また管弦楽作品ばかりでなく、バッハのミサや受難曲、ハイドンのオラトリオなど声楽作品にも名演を残しています。

 演奏は、勢いで弾き飛ばすシャープさよりも、思慮深く、時に歩みを止めながら、作曲家のこだわりの場所をクローズアップするかのような、作品の魅力を深い場所まで探訪してゆく大人な音楽。音質も、他のピリオド楽器オーケストラと比べると暖色系の質感のある音をもっています。

 このようなプログラミングとオーケストラ・サウンドは日本でも大変好まれ、ファンの声に応えるように、度々来日公演を行いました。また、現在日本のピリオド演奏界を牽引している日本人音楽家たちがこのオーケストラに参加していたこともあり、日本と最もゆかりのあるピリオド・オーケストラということができるでしょう。

 ブリュッヘンという巨匠の強力な磁場に吸い寄せられた音楽家から成り立っているオーケストラですが、2014年8月にブリュッヘンが死去。しかしその後も彼の霊感を受け継ぎつつ活動を継承することが決められ、さまざまなゲスト指揮者を迎えつつ年間5回のプロジェクトを維持、現在に至っています。

 私事になりますが、1991年のアムステルダム留学時には、毎回リハーサルを覗かせてもらい、各木管楽器奏者とホルン奏者からレッスンを受ける幸運にも恵まれました。それからはるか時を経て2018年の初秋にポーランドの国営ショパン協会の催す〈第1回ピリオド楽器によるショパン国際コンクール〉を聴きにワルシャワを訪れた際には、コンクール前のフェスティバル開会の催しから、コンクール本選での演奏までを〈18世紀オーケストラ〉が担当していて、そこで久々の再会を果たすことができました。その中に結成からのメンバーを未だ多く数えることができました。彼らの隣には若い世代の演奏家が座り、伝統が引き継がれつつも新しい音を聴かせてくれていたのが印象に残りました。

【18世紀オーケストラ、ハイドンのシンフォニーのCDの表紙】

(2018.10.20)

18世紀オーケストラの公式サイト

http://www.orchestra18c.com


【関連動画】

ベートーヴェン:シンフォニー 第3番 変ホ長調 作品55「英雄」

18世紀オーケストラ、F.ブリュッヘン(指揮)☆