古典派シンフォニー

百花繚乱

 

シャンブル・フィラルモニク La Chambre Philharmonique〔室内フィルハーモニー〕


 フランスの名指揮者、エマニュエル・クリヴィヌ(Emmanuel Krivine)によって2004年に設立された、ピリオド楽器を用いるオーケストラ。フランス放送フィルハーモニー管弦楽団の主席客演指揮者や、リヨン国立管弦楽団の音楽監督を歴任しながらも自らの思い描く音楽を実現するために、労をとってオーケストラを組織したクリヴィヌは、どのような想いをこのオーケストラに託したのでしょうか。
 既存のオーケストラではメンバー全員が志を同じくして、同じ方向性をもって音楽をするのは確かに難しいこと。楽器や音楽語法に対して研究心をもち続ける、妥協のない音楽的欲求を同じくする仲間を厳選しながらオーケストラを組織することは、求心力ある音楽を志す人ならば一度は夢見ることではないでしょうか。またクリヴィヌは、音楽作りについて、指揮者からの一方的な指示だけに頼らない、各プレイヤーが室内楽におけるのと同じような自発性をもって演奏することの重要性を説いています。

 彼らのレパートリーは、モーツァルトより遡ることはありません。ベートーヴェンのシンフォニー全集、メンデルスゾーン、シューマン、ベルリオーズ、フランク、ドヴォルジャークなどの19世紀、ロマン派の作品をレパートリーの中心に据えています。安易な演奏習慣に染められた、これまで何万回と演奏されてきた名曲たちを洗い直し、新たな息吹を作品に与えることに成功しています。彼らの過去の公演のプログラムを紐解くと、ひとりの作曲家をチクルスにして、ある時期集中的に取り上げるというパターンが多く見られます。各々の作曲家の語法をものにしてゆこう、という彼らの謙虚で熱心な研究心に尊敬の念を覚えずにはいられません。

 ロマン派の時代、管楽器は改良の一途をたどっていましたので、曲によってフルートが木管になったり金属管になったり、へ調の長管トランペットやピストンホルンが登場するなど、一時代を風靡しつつも忘れ去られていった楽器を彼らの演奏動画の中に見ることができます。

 シャンブル・フィラルモニクの管楽器は、セクション内にとどまらず、各楽器間でも、音の減衰やシェイプ、音量バランス、ヴィブラートを少なくして調和をとろうというような、アンサンブルをまず重視、という姿勢に貫かれています。弦楽器と管楽器群の協和も誠に美しく、オーケストラがひとつの楽器として蘇るかのごとく立ち現れてくるようです。

〈室内フィルハーモニー〉というこの団体の名前には、室内楽の延長としてのオーケストラが意識されているように思います。大仰になり過ぎてオーケストラが失ってしまったもの。ハーモニーの純粋さ、明晰な見通しのよいテクスチュアー、作曲家の内なる声・・・、シャンブル・フィラルモニクの演奏を通じて、オーケストラ作品に本来宿るべきさまざまなニュアンスに改めて気づかされています。

 2015年からは3年間、エクス・アン・プロヴァンスの大劇場のレジデンツ・オーケストラとなり、ここでブラームス・チクルスを展開中。彼らはどのような楽器を用意して、これまで培ってきた経験を生かしてブラームスに取り組んでいるのでしょうか。そろそろディスクも出回る頃でしょう。新たなブラームス演奏との出会いが楽しみです。

【シャンブル・フィラルモニクとE. クリヴィヌ】

(2016.1.1)

シャンブル・フィラルモニクの公式サイト

http://www.lachambrephilharmonique.com


【関連動画】

L.v.ベートーヴェン:シンフォニー 第4番 変ロ長調 作品60 第1楽章より

シャンブル・フィラルモニク、E.クリヴィヌ(指揮)☆